ロルフ・アイヒラー先生によるアンサンブル・レッスン
日時:2004年3月20日(土)17:20〜19:00
場所:石森管楽器地下イベント・スペース
ロルフ・アイヒラー先生プロフィール
 アルフレート・プリンツと並び、レオポルト・ウラッハ最後の弟子。1951年に、ウィーン・モーツァルト協会主催のコンクールで第一位を獲得。
 1955年にウラッハが倒れた後、彼の代わりに演奏することもあり、若い頃を含めてウィーンのすべてのオーケストラ及びオペラで演奏をした。
1956年から1988年まで、ウィーンのニーダーオーストライヒ・トーンキュンストラ・オーケストラの首席奏者を務め、退団後も1999年まで客員奏者として活躍。
 日本には、1952年夏から1954年秋まで滞在し、現在のNHK交響楽団首席客演奏者を務めるとともに、東京芸術大学のクラリネット科で指導に当たった。
 日本での二年の滞在期間中、まだ教材に乏しかった我国に残してくれた一冊「Scales for clarinet」は、日本でクラリネットを学ぶ者にとって切っても切り離せない音階教則本となり、現在に受け継がれている。
 77歳となった現在もなお、精力的に後進の指導に当たっている。
アンサンブル・レッスン概要
  小林先生や石森さんのご尽力により、先日、クラリネット教本のバイブル「Scales for Clarinet」の著者ロルフ・アイヒラー先生による公開アンサンブル・レッスンが実現しました。
 アイヒラー先生に関する情報はとても少なく、その容姿も、一般的にはスケール教則本の若き日(20代?)の写真を通じて知ることができるだけ…。さて、実際にお会いすると、人柄が滲み出ているかのような好々爺ぶり。ドイツ・オーストリア人らしく背も高く、恰幅もよく、姿勢はすっと真っ直ぐな方でした。
 ホルツのレッスンの前に公開個人レッスンがあったのですが、レッスンを始めるに当たっての先生の言葉−「ここにいらしている皆さんと一緒に音楽を作っていけることを、大変嬉しく思います。
 アンサンブル・レッスンの開始。先生の持論では、B♭クラリネットの場合、ピアノやクラリネット同士でチューニングをするときは、楽器の基音であり管を長く使うB♭でやるべきとのこと。その後、一番管が短い開放のFと、管が中位の長さになる下のB♭を合わせていく。これにより、全体の音程のバランスが取れるとのことでした。ホルツの合奏でその効果がどの位出るかは心許ないところではありますが…。
 
まずは、ホルツの会常任指揮者On先生のタクトで、序曲から5曲目までを通して演奏し、それをアイヒラー先生がチェック。On先生のテンポは、クラ協演奏会の時のとおり快速でしたが、代わって指揮をしたアイヒラー先生のテンポは「カール・ベーム」的(このテンポが、先生の確固としたフィガロ解釈によるものか、加齢に伴う一般的現象か、はたまたホルツの演奏レベルに適切に合わせたものかは、知る由もありません。)。
先生から頂いた主なご指摘を挙げると、
  • ソロ的な部分は、このぐらいの規模のアンサンブル(15人)の場合、バランス上2本で吹いた方がいい。
  • 低音の旋律の部分は、他の楽器の人はそれがちゃんと聴こえるように(聴きながら)吹く。
  • 序曲の終わりのところは、次に続くぞという雰囲気を出すためにリタルダンドせずインテンポで行く。最後の音も長く伸ばさない。
  • 「フィガロの結婚」は先生のお気に入りなのか、オペラの場面を詳しく説明され、その場面に合うような演奏の仕方をするようにとのこと。
  • ホルツの特徴「豊かな音程」については特段の注意無し。Wiener Schuleは音程には寛容?!
 柔らかい声で歌いながらポイントを表現し、ときにはユーモラスに日本語を交えながら(日本に滞在されていただけあって随所に日本語が出てくる)の約1時間半にわたるレッスンは、こうして文字にすることでは表すことのできない貴重な体験でした。
 先生は帰国予定の関係でレッスン終了後すぐに駅に向かわなければならなかったため、一緒にお酒を飲めなかったのが残念ではありましたが、時間がない中でも会員との写真撮影に快く応じてくれ、優しい人柄が印象に残りました。
先生は、来年もまた日本にやって来られるそうです。今回お会いできなかった方も、来年はぜひ参加してみてください。
余談
 アイヒラー先生の録音にモーツァルトのコンチェルト(LP)があります。会員の方にダビングしていただいて聴いてみましたが、ウラッハのもそもそした感じが抜けた感じの、過度な演出のない上品でなめらかな演奏でした。注目すべきは、一般にやや出だしが遅れるように感じられるウィーンの奏者にあって、アイヒラー先生は常にオケをリードするぐらいの出だしとテンポであることです。ただ、先生にこの録音のことを話したときの反応は…「あの演奏には、その後いろいろ勉強して今ならそうは吹かない(気に入っていない)所があります。何しろ、あの曲は50回も演奏してきましたからね。」とのことでした。
以上
2004/3/23 by Oh