ホルツの会 お勧め書籍紹介

Last Updated on 2002/8/14



音の終わりを大切に
〜北爪利世の「クラリネット、わが人生」〜
近藤滋朗 編
音楽之友社 ¥2,200
北爪利世(きたづめ りせい):
 クラリネット奏者。1916年(大正5年)東京生まれ。成城学園高等学校時代にクラリネットを始める。東京音楽学校(現・東京芸術大学音楽学部)卒業後、東京放送管弦楽団、東京都フィルハーモニー管弦楽団(現・東京フィルハーモニー交響楽団)を経て、1948年(昭和23年)に東宝交響楽団(現・東京交響楽団)に入団。1986年(昭和61年)、70歳で退団。桐朋学園大学名誉教授。ホルツの会名誉会長。
 元東京交響楽団の名クラリネット奏者として知られた北爪利世氏。86歳の今も音楽への情熱は変わらず、クラリネットを吹き続けている愛称「づめさん」は、オーケストラ奏者としてだけでなく、独奏者や室内楽奏者としても多彩な活動を繰り広げていた。その「づめさん」がクラリネット奏者として見聞した戦後日本楽壇史の一側面を、あますところなく語り尽くす。づめさん所蔵の貴重な写真やプログラムも満載で、資料的にも価値が高い。(音楽之友社新刊案内より)

 我々素人の団体が、このような記念すべき本の一ページを飾らせていただけた事は、我々自身誇りに思い、また、この上ない感謝の意を評さなければなりません。
 また、逆に我々の側から物を申させて頂くなら、先生の中でもホルツの会を気に掛けて下さっているという事ではないでしょうか?こんなに光栄な事はないと思います。
北爪先生に感謝したいと思います。(2002/8/8 Kb )

 表紙の Wurlitzer は私の楽器です。文中、Karl-Heinz Steffens氏に就いての記述が見られることもあり、元同氏所有の楽器はふさわしいのでは、ということになりました。(2002/8/9 Kn)

 本日購入して、一気呵成に読み終えてしまいました。古き良き時代のガクタイたちのお話は一読に値すると思います。書店で目にした際にはぜひ手に取ってみて下さい。(2002/7/29 Kt)

 北爪利世さんの本、早速購読いたしました。大変すばらしい内容でした。私も遅ればせながら、これから一生懸命頑張ろうと勇気付けられました。お会いしたことは勿論ありませんが、お人柄が十二分に偲ばれます。
 さて本の中で、楽器修理の谷峰さんの記述がありましたが、九州へ帰られたのではなく、本当は広島です。何を隠そう、私と同じ廿日市市(はつかいち し)のご出身で、出身高校は私の兄と同級生、広島カープ山本浩二監督の一年先輩です。私も二度ほどクラリネットのリペアをしていただきました。世界各国のプロプレーヤーから依頼が来るそうです。
 ということで、広島に帰られたというのが正解です。「アトリエ ミネ」を開業しておられます。(2002/8/24 Sak)

 
『ドイツ音楽の一断面』〜プフィッツナーとジャズの時代
道下京子,高橋明子著
芸術現代社 ¥2,400
ドイツ音楽の一断面
昨年はR.シュトラウスの没後50年にあたり各地で記念行事が行われました。生地ミュンヒェンも、もちろん様々なイヴェントに明け暮れ、ミュンヒェン在住当会のYk支局長からは「ミュンヒェンはシュトラウス一色です!」という手紙が来たほどでした。しかしこの街はもう一人、同市縁の大作曲家のやはり没後50年を記念していたのをご存知でしょうか?
その作曲家こそがハンス・プフィッツナー(1869−1949)です。

前半は道下氏によるヴァイマール期のドイツにおける彼の活動を中心に、後半部分は高橋氏による20年代のベルリーンで爆発的に広まったジャズを中心に書かれています。
敗戦によって莫大な賠償を課せられ激しいインフレに喘ぎながらも文化的には未曾有の水準を誇った"黄金の20年代"のベルリーン。E.クライバー,B.ヴァルター,O.クレンペラーが3つの歌劇場に在り、W.フルトヴェングラーがフィルハーモニーを振っていた時代。
そんなベルリーンに在って作曲、文筆活動の他、プロイセン芸術アカデミーでH.プフィッツナーは進歩的な作曲家・ピアニストであるF.ブゾーニと共にマスタークラスで教鞭をとっていました。
この事実からも(その舌鋒鋭い言論に対する賛否はともかくとして)当時のドイツにおいていかに彼が評価されていたかをうかがうことができます。
今は忘れられているプフィッツナーについて本書は、その評価、彼の作風や事ある毎に語られたその美学が当時、時代の要請にかなっていた。或いはそれを受け入れる土壌が育まれていた。という視点からその作品を捕らえます。現在は上演されることも無いオペラ『愛の花園の薔薇』にマーラーは何故、あれほど熱中したのか。有名なカンタータ『ドイツ精神について』や氏の研究テーマであり、この作曲家の代表作である音楽的伝説『パレストリーナ』について。そしてトーマス・マンが示した彼に対する理解も同じ所にその源泉を見出すことができると。

その生涯を俯瞰する冒頭の章で個々のエピソードが布石の無いまま突然語られたり、後半クルシェーネクの『ジョニーは演奏する』に対して当時の大批評家J.コルンゴルトが展開した反対キャンペーンにふれられていない等、多少の不満はありましたが、本書にはそうした些細なことを補うだけの内容があります。
とかくR.シュトラウスによってのみ語られてきた、そして時のナチス政府との関わり故にあまり語られなかった戦間期のドイツ音楽に新たな照明をあてるこの本は今世紀初頭からの後期ロマン派と続く世代に、また文化に関心を持つ諸氏にとっては見逃せない一冊です。

プフィッツナーについては昨年刊行された以下の本もあげておきましょう。
Johann Peter Vogel "Hans Pfitzner ~Leben・ Werke・ Dokumente"
Atlantis Musikbuch-Verlag

去る4月29日フルトヴェングラー研究会管によって成された『クリスマスの妖精』※序曲の日本初演にあたり、著者の一人である道下氏にお会いする機会を得ました。
たまたま耳にしたチェロ・ソナタの美しさに、プフィッツナーを研究対象とした由。今後の活躍を期待しましょう。
※"Das Christelflein"op.20 1906/18よく『キリストになった子悪魔』と訳されているようですが同管のプログラムにあった『クリスマス〜』の方が作品にふさわしいと思いますのでこちらを使用しました。  

(2000/5/9 by Hd)

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