日本クラリネット協会へのHolzの会紹介記事(抜粋)

〜ホルツの会第1回演奏会(2000/2/11)のご紹介〜


 「Holzの会」が去る2月11日、第一回自主公演を代々木上原のMusicasaで開催しました。

 2時の開演に先立ち会員諸氏が所有するエーラー式、ヴィーン・アカデミー式クラリネットの展示と石森管楽器の協力による試奏会が行われ、日本ではなかなか接する事の少ないこれらの楽器に興味をもつ方々が早くから来場され賑わいを見せました。ご存知のようにモーツァルトやR.シュトラウスが好んで使ったバセットホルンに対する関心は特に高く、この機会にその響きにふれようという方が多かったようです。
当日その一部が展示された、会員諸氏が現在所有している独墺系の楽器は、G・Es・D・C・B・A からバセットホルン、バスクラリネット、ドイツ本国でも珍しいコントラバスまで多岐にわたっているだけでなく、その製作者も“エーラー式”の名の由来にもなったO.エーラー、クラリネットのストラディヴァリウスとも言われるL.ヴァルシェフスキ、L.ヴラッハ本人が所有していたと言うF.コクタンの他C.マイネル、J.モレンハウアーといった往年の名器からH.ヴーリッツァー、K.ハンマーシュミット、O.ハンマーシュミット、YAMAHAといった現在も続く名門、さらには新進気鋭のF.ハンマーシュミットやシュヴェンク&ゼゲルケまで極めて多岐にわたっています。

      

 今世紀の初めにエーラー等によって確立されたドイツ・オーストリアにおけるこの楽器の100年の歴史を間近に見るだけでなく、実際手にして音を出せるというこの試みは、本邦ではもちろん独墺本国でも類を見ない極めて貴重な催しだったと自負しているところです。
さて、演奏会は前半が四重奏や五重奏。モーツァルト『2本のクラリネットと3本のバセットホルンのためのアダージョ変ロ長調』、小林会長を独奏にベールマン『アダージョ変ニ長調』といった古典の名作から近・現代のトマジ『ディヴェルティスマン』よりロンド、グラントマン『バガテル』、更にはB.グッドマンのジャズ・ナンバーまでが披露されました。

 モーツァルトの作品でこの日初めて実際のバセットホルンの音に接した方は多かったことでしょう。
ベールマン作品では会長の見事なソロを伴奏するコントラバスまで含めた五重奏が、聴きなれたピアノ版とは一味も二味も違った調和を醸し出し、『ロンド』や『バガテル』ではドイツ式の楽器が軽快でコミカルなタッチをも十分に表現し得る事を証明していたように思えます。
グッドマンの『メモリーズ・オブ・ユー』で「ベーム式との音の違いが良くわかった」という声が聞かれた事を付記しておきましょう。

 休憩後は参加全員のアンサンブルで『魔笛』序曲と今回メインのドヴォルジャーク『管楽セレナーデ』。
今回の参加メンバーは20人弱でしたが、『魔笛』の和音が響いた時、その分厚いけれど柔らかいフォルテを聴いて、ドイツ管のドイツ管たる所以を納得された方は多かったのではないでしょうか。
 『セレナーデ』ではオーボエ・パートに2本のC管を配したことで、また違った音の配合を生み出し、さまざまな特殊楽器の掛け合いが新しい興味を喚起していたと思います。

 個々のミスこそ数え上げればきりがありませんが、演奏する側の思いと聴衆と、そして両者の程よい距離を実現した会場の和やかな雰囲気とがあいまって、密度の高い2時間でした。
 来場された方々が十分楽しまれたなら、そして「クラリネットにはフランス式とドイツ式があって、それぞれ素晴らしいんだ」という思いを抱いて帰路についてくださったなら、会員一同これ以上の歓びはありません。

(2000/3/3 by Hd)


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