| エーラーへの道 | 
| by Gm | 
| 第2章 フィンガリング | 
| エーラーも吹いてみたいが、指が難しいようだから、と漠然と思い込み敬遠している人は多い。事実は、その通りである。
      前章でも触れたようにベームからエーラーに替えた当初、感覚的には3割がたテクニックが落ちたような気がするだろう。
      ベームでは児戯にも等しいフレーズがエーラーではエーラーイ苦労するということがままある。理由はエーラー特有の指使いにある。 ベームでは全ての指はただ単純に上下に動かせば良いのだが、エーラーでは… | 
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| やっぱりやーめた!と言わないでもう少しお付き合い願いたい。エーラーを断念させるのがこの章の本意ではない。私に言わせれば、いにしえのフルーティスト、ベームさんが考案したベーム式の指使いが簡単すぎるのだ。指を順番に上げたり下げたりすれば良いだけのベーム式フィンガリングによって、フルートとなぜかクラリネットも『出来ないことは無い』と言う位の圧倒的な運動性能を獲得した。速さの点では、ほとんどのフレーズでエーラーはベームに負ける。良くて互角だ。ある種のフレーズは、かの天才、ザビーネ・マイヤーをもってしてもアマチュアのベーム吹きに敵わないだろう。 | 
| だが、それがどうしたというのだ。音楽はタイムを競うものではない。逆に、ベームの便利なフィンガリングと引き換えに失ったものがある。それは楽器の命である「声」だ。フィンガリングの違いにより、ベームの欠点と言われる上のCの空虚さや、Fシャープの甲高さとエーラーは無縁である。また、エーラー特有のクロスフィンガリングや替え指の多さにより、音色に微妙な陰影を与えることもできる。 | |
| 是非解って欲しいのは、フィンガリングが難しいと言っても、それはあくまでベームに比べればの話であり、それが克服できない程のものではないことはドイツやオーストリーの子供が今もブラスバンドでエーラーを吹いていることを考えれば容易に想像がつくのではないだろうか。ウェーバーやシュポアの時代のクラと今のエーラーでは火縄銃と機関銃ほどの差がある。エーラーが難しいなどと言えば当時のクラ奏者のバチが当るというものだ。 幸か不幸か抜本的な改造が行われなかったオーボエやファゴットの連中は、今でもエーラー吹きと同じように指で苦労しているのだ。エーラーに替えると他人の苦労が解る様になり、思いやりのある優しい人になれるという副次効果もあるのです。 | |
| (2002/2/22 by Gm) | |
| 参考:フィンガリングチャート | |
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